2000 カレッジランポ1 分権で拡がる自治行政の可能性
分権一括法成立で、地方自治体は何ができるようになったか 
辻山幸宣
(中央大学教授)

*7月8日に実施したカレッジランポ「分権で拡がる地方自治体の立法機能」の
講演『分権一括法成立で、地方自治体は何ができるようになったか』の概要を紹介します。(文責・編集部)


中央集権でできなかったもののリスト
 今年4月からの地方分権一括法の施行により、何が自治体にとって可能になったのだろうかと問われると、意外と答えられない。これは、これまで集権体制であったが故にできなかったことのリストがないということである。なぜリストがないのか。3点ある。
 住民は国の仕組みに対しいろいろとぶつかっているはずだが、行政がなんとかしようと思わなかったのが第1点。2つめは、住民が自治体に求めても、それは国の仕組み上できないと言われると引き下がる。3つめは、実は住民も自治体行政も議会も集権下であまり困らなかったから。なぜか。国は現状にあわせてこまごまと制度を改善し通達を出している。それでも国が改善しないものは、自治体がひそかにアレンジして、現状に対応している。そのために何が困っているか実感されずにきて、いざ分権となっても従来の業務を続けてなんら支障がないといのが、多くの自治体の認識だろう。
 全体として、機関委任事務はうまく機能してきたことを見逃してはいけない。つまり、これによって自治体、首長にとって寄らば大樹の陰で住民に対する説明責任を回避できたし、議員、市民にとっては監視し、是正勧告する責任が解除されてきた。こうした責任は国の主務大臣が果たしてきたのだが、この分権改革による大きな変化の1つは、そうした責任が自治体行政と住民にかぶさってくることである。

条例の制定、改廃に市民の意思を
 分権一括法で可能になったことはいくつかある。まず、機関委任事務だったものが自治事務化され条例でできるようになったことにより、住民の意思を反映した条例ができる。2つめは、廃棄物処理などの法定受託事務と言えども自治解釈を行ない、住民の意思を条例化して地域のルールとしていくことが可能となる。3つめが自治体の行政組織を、住民が使いやすい組織に変えていくことも必置規制の緩和で可能になる。自治行政組織条例に市民からの提案権を盛り込むなど行政組織の住民コントロールを推進できる可能性がある。何ができるかのリストアップには、行政の都合で制定していた要綱や規則の見直し、陳情や請願で不採択になった原因の洗い出しなどが必要になるだろう。

新たな基準やシステムづくり
 4つめは、執行部門が握っていた議決事件の追加を議会の議決で決められるようになった。個別法の改正により都市計画、学級編成、学校区の指定、予防接種などを自治体が弾力的に運用できることになる。まちづくりや議会改革つまり議会設置条例、議員定数や報酬、議会事務局の独立性確保のために専門市民集団広域連合機能化、選挙事務の改善、自治基本条例の制定など、基準やシステムを自治体独自で作れるようになるということは、決定の正当性を確保できるか否か、つまり自治体・市民の社会形成能力・自治体経営能力が試されることでもある。その意味でも重要になってくるのが情報公開により市民が政策過程情報にアクセスできることである。
 サービス行政の拡充、おまかせにより行政がカバーする領域があまりにも巨大化している事実がある。つまり行政の独占、独善状態からの脱却、言い換えれば行政が掌握している多大な権限、資源、情報、財源をどうやって地域社会に委ねていくか。消費者ばかりでないコミュニティをどう創出するかの制度設計が問われているということだ。

2000/07/08  カレッジランポより
                 このほか、2つの講演をまとめたブックレットを発売する予定です

home