アメリカにおけるNPOの政策提言活動
ジャン・マサオカ(コンパスポイント・ノンプロフィット・サービス※事務局長)
※コンパスポイント・ノンプロフィット・サービスはアメリカ・サンフランシスコを中心に活動する全米最大といわれるNPO支援のサポートセンター
<2001年1月28日 講演の概要>
はじめに、コンパスポイントの活動を説明します。NPO支援には、運営を助ける支援と財政支援があります。また、NPOを支援する制度や政策提案活動の支援も行ないます。私たちと似たような団体は、全米で約300あるといわれます。
コンパスポイントの年間予算規模は約500万ドルで、そのうち60%が自主財源、40%が助成金です。助成金は主にパッカード財団から来ます。また、自主財源はNPO支援事業への行政からの委託金と、フォード財団からNPO支援事業として10のNPOの支援委託金が主な財源になっています。
■アドボアカシーは活動の柱の一つ
政策提言、いわゆるアドボカシーを主な目的に活動するNPOはほとんどありませんが、アドボカシーを活動の柱の1つとしていることは確かです。私たちがサンフランシスコの約300のNPOの活動を調査した結果から、ほとんどのNPOがアドボカシーを行なっており、活動の比率からいえば第1位ではないが、上位3つのうちの1つには入れています。
アメリカにおけるアドボカシ−の活動の方法には、次のようなタイプがあります。議員や公務員に働きかけて政策の実現を図るロビーイングタイプです。調査では、ロビーイング活動は団体の全活動の20%以下(予算ベースで)でした。金額的には大きくないのですが、これにはボランティアの活動は入っていないので、実際の活動量としてはもっと大きいと思います。もう一つは、草の根ロビー活動といわれますが、一般市民に呼びかけて電話、FAX、署名などを使って行なう活動です。これには一般市民への啓発活動も含まれます。
小さなNPOがアドボカシ−を行なうときは、知り合いの議員を通じて提案する、同じ分野の大きなNPOに支援を頼むなどの方法をとります。
■アドボカシーの最近の事例
私たちの団体が関わっているNPOの中から3つの事例を紹介します。
(1) 農業会社がサンフランシスコ北100マイルで計画していた森林を農地に開発する事業に対して、環境団体が開発の制限を求めて、地域住民に働きかけ、条例を新たにつくって開発を制限しました。
(2)
アジア系住民の薬物中毒への対策事業に、行政による財政支援を得るために、コンパスポイントが支援した事例です。財政規模は3年間で600万ドル(各年で200万ドル)でした。
これは、2つのカウンティにまたがる地域を対象とする事業として、州議員にモデルプロジェクトを作らせました。この事業にはどのNPOも応募できることとし、資格要件として、事業対象となる2つのカウンティに事務所を持つことと、すべてのアジア系住民にサービスすることを定めました。ここで、いわばからくりがあって、この要件に合う団体は、カリフォルニア州では私たちが支援する団体だけで、募集こそすべての団体にオープンにされていますが、実際は事前に話ができあがっていたことになります。
(3) NPOと地方議会が一緒になって企業に働きかけた事例です。これは、電力会社の発電所閉鎖に対する失業者の発生をくいとめることを目的に、サンフランシスコ市議会と6つのNPOが電力会社と合意し、同意書を作成したものです。閉鎖に対して、1200万ドルをサンフランシスコ市に支払い、コミュニティのために使うことに同意しました。。
これについては、市長が主導しましたが、市議会と1200万ドルの使途をめぐって争奪戦となっていて、多分、市議会が主導権を握ると見られています。この件に参画した6つのNPOは結局、同意書づくりに深く関わることができませんでした。この電力会社は発電の供給量が少なく、いわゆるカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)の管轄には入らないのです(※1)。
カリフォルニア州では、イニシアティブ(住民発議)が盛んで、NPOが条例案づくりの支援もします。インターネットの普及で署名が簡単にできるようになり、イニシアティブによる住民投票の数が40から50にもなっています。
(※1:編集部)CPUCは電話、電力、ガス、交通など民間公益事業を規制する州機関で、職員は約1000名。この種の規制機関としては全米最大といわれる。CPUCの中に、案件の審議過程に市民参加を促すための「市民参加局」(パブリックアドバイザー局)があるのが、カリフォルニア州の特徴といえる。市民参加局は、市民が会議で発言したり、公聴会に出席したり、意見書を提出するなど、決定のプロセスにさまざまな形で参加をしていくことを具体的に支援することを業務としている。マサオカ氏が紹介した事例は、このCPUCの対象事業にはならないので、市民参加局の支援する参加の手続きにのらないということのようだ。それで、コンパスポイントが支援をしたということであろうか(質疑の時間切れで確認できなかった)。home |