NPO立ち上げのための事業開発と財源開発

STEP.1 NPOの基礎知識

(1)NPOという言葉の意味

民間の自発的な非営利の組織

NPO(エヌ・ピー・オー)とは、英語のNon-profit Organizationsの頭文字(pは小文字ですが)をとって省略したものです。直訳すると「非営利組織」となります。

これは、米国で、私立学校や病院、市民活動団体やボランティア団体などを含めた「企業でない民間組織」一般を呼ぶときの名称です。

一方、米国と違って日本では、NPOは、市民活動やボランティア活動を推進している団体に対する呼称として使われています。また、1998年にNPO法がスタートしてからは、この法律で法人格をとったNPO法人だけを指してNPOと呼ぶ場合もあります。

日本では、NPOという言葉の母国である米国とは、その意味する対象団体の範囲が違うことに注意が必要です。

これは、両国の歴史的・社会的な背景の違いに起因しますが、NPOという言葉が意味していることは共通しています。

つまり、NPOというのは、「特定の社会的目的を追求するための、営利を目的としない(非営利の)民間の自発的な組織であって、政府から独立しており、継続的になんらかの社会サービスを提供している団体である」というものです。

非営利組織という点では、日本でも、学校や社会福祉法人・公益法人などもNPOであるといえるのですが、「民間の自発的な活動であり、政府から独立している」という点で、米国的なNPOの意味からは、はずれてしまうということなのでしょう。

(2)NPOが広がってきた歴史的背景

行政サービスの限界からスタートしたNPO

日本では、戦後長い間、福祉や環境保護といった公共のための事業は、政府や政府を補完する団体(社会福祉法人や公益法人など)が行うという考え方が支配的でした。

しかし、70年代後半に入ると、行政の公共サービスがだんだん硬直化してきて、市民ニーズに合わないという事態が起こってきました。行政サービスは、在宅介護や難民支援や地域の自然保護などといった新しい社会のニーズに上手く応えきれなくなってきたのです。

このような行政サービスの限界に対して、70年代から80年代には、福祉や環境保護、国際協力といったさまざまな分野で、新しい市民ニーズに対応した、市民が主体となった利益を求めない活動をする団体が次々と生まれてきました。これらの団体は、ボランティア団体とか、市民団体、市民活動団体などと呼ばれました。また、後には、NPOとか、国際協力の分野では、NGOなどと呼ばれていくようになりました。

90年代に入ると、行政サービスに限界があることが多くの人々に理解されるようになってきました。また、財政危機により、行政自身も公共サービスをどんどん増やしていくことがもはやできないということを認めるようになりました。

こうして、市民からも、行政からも、行政サービスの様々な限界を超えて公共サービスを提供できる存在としてのNPOに注目が集まってきました。

とりわけ、95年の阪神・淡路大震災の際には、これら小さなNPOが多数被災地支援に駆けつけ、社会的評価が一気に高まりました。行政側にも、NPOと対立するのではなく、NPOと協力して様々な社会的課題に取り組んで行こうという意見が主流になってきたのです。

(3)NPO法とNPO法人

民間の自由な社会貢献活動を促進するための法律

1998年に、NPOの活動をいっそう促進するためにNPO法(特定非営利活動促進法)が議員立法で作られました。

NPO法は、一言でいうと、ボランティア団体や市民活動団体などのNPOが簡単に法人格を取得できる制度であるといえます。10人の構成員がいて、定款などの書類を整え、都道府県や内閣府に申請すれば、4ヶ月以内にほとんどの団体がNPO法人(特定非営利活動法人)となることができます。

この法律は、市民社会(契約社会)の中で、NPOがきちんとした契約主体として活動できるようにその組織についての制度を定めたものだといえます。企業で言えば、商法に該当するものです。したがって、NPO法には、法人となる要件や法人の組織、運営の基本的ルールなどが規定されています。

しばしば、NPO法については、政府がNPOの活動をバックアップし、補助金や税制で支援することが目的でつくられた法律であるという「誤解」があるようです。「NPO法人になったら行政からの支援が自動的に受けられる」と考えている人もいますが、これは正しくありません。

あくまでも、NPO法というのは、市民が自発的に社会貢献活動をしたいと考えた時に、それが組織としてできるように、法人制度を整えたものです。

NPOは、基本的には、民間の自由な活動であって、政府から独立した活動であるというのが大切なところです。個々の活動を行政が支援するかどうかは、NPO法とは別の話なのです。

NPO法人の申請方法等は、第2章をご覧ください。

(4)NPO法人化のメリット・デメリット

事務的な負担が増えることが大きなデメリット

NPO法人になることのメリットというのは、基本的には、団体が契約主体として法的に認められるということにあります。

したがって、団体が契約によって活動を行おうとする場合や、事務所を借りる場合、また、土地などの資産の所有がしやすいというメリットがあります。

また、法的な地位は、外部からの信用を高めることにつながります。

一方、毎年、都道府県や内閣府に事業報告書や会計報告書を提出しなければならないとか、法律や定款に則った運営が必要になってくるなどの事務上の煩雑さは増えます。また、組織変更や住所変更をしたりする場合に、所轄庁への再認証の手続きが必要になるなどの手間もかかるってきます。これらの手間が最大のデメリットだといえるでしょう。

●主なメリット
●主なデメリット・責任等

(5)NPO支援税制やその他の支援制度

増えてきているNPO支援制度

2001年10月から、NPO支援の新しい制度として、NPO支援税制(認定NPO法人制度)がスタートしました。これは、NPO法人のうち一定の要件を満たすものとして国税庁長官の認定を受けたNPO法人が「認定NPO法人」となり、この認定法人に寄付をした個人や法人は、課税所得から一定の金額まで寄附金を控除できるという制度です。

この制度により、認定NPO法人になると寄付を集めやすくなるというメリットがあります。

ただし、認定NPO法人になるための要件は、「過去2事業年度の総収入金額等に占める受入寄附金額等の割合が3分の1以上あること」などといった厳しい内容となっています。そのため、2002年4月末段階で、認定NPO法人となれた団体は、わずか5法人にとどまっています。

制度はできましたが、ほとんど使えないのが現状なのです。

税制の他には、NPO法人向けの融資制度もあります。信用金庫や労働金庫が行っています。また、ボランティア活動をする際の保険などもボランティアセンターなどを通して加入できます。

世田谷区では、まちづくり活動のために助成金を出す仕組みをもっています。中央省庁でも、NPO支援のための助成制度やモデル事業の委託などを実施しています。

法人化支援のための相談窓口も設けられています。この窓口には、民間のものと行政が開設したものがあります。有料の窓口もありますので、相談する前に、どのような相談をどのような体制で行っているのかを確認しておいてください。

また、各自治体でNPO向けのマネジメントセミナーなども開催しています。

これらの制度の概要などの情報は、第2章を参照してください。

(6)「非営利」がキーワード

非営利と無償と無報酬を区別する

NPOの組織としてのキーワードは「非営利」という点にあります。

この場合、「非営利」というのは、そのさまざまな活動から得た利益(剰余金)を、団体の構成員(会員や役員など)に分配しないことを意味しています。

NPOにおいては、さまざまなモノやサービスを対価を得て販売しても、それは「非営利組織である」ということとなんら矛盾はしません。そこであげた利益を分配せず、その団体の目的や事業に再投資すればいいのです。つまり、団体が「有償」でサービスを提供することと、「非営利」とは別の話だということです。非営利組織だからといって、サービスは無償でなければならないというわけではありません。

もう一つ、ボランティア活動の原則である「無報酬」と「非営利」との関係も理解しましょう。

NPOでは、個人はボランティアとして自分のためには稼がないで活動するけれども、組織のためには資金を作っていくということが当然あります。個人が労働の対価をもらわないという「無報酬」と、組織が利益を分配しないという「非営利」も別の概念なのです。

また、NPOでは、活動を行っていくために有給のスタッフを雇うことも必要となります。この場合のスタッフへ払う給与や報酬も、NPOにとっては活動のための経費であって、利益の分配ではありません。有給スタッフを雇う(報酬を出す)ことと、非営利とは矛盾しないことだと理解してください。

NPOは対価をとる事業ができるし、有給でスタッフを雇うことも、ボランティアの参加を求めることもできるということを理解することは、活動の幅を大きく広げるものとなります。

(7)NPOの主な資金

NPOの8つの資金を理解する

NPOの収入を構成する「資金の種類」(ここでは「資金」と呼びます)は8つあります。

それは、会費、寄付金、本来事業からの対価、非本来事業からの対価、助成金、補助金、借入金(つまり借金です)、金利等です。

会費は、会員からの定期的な納入金です。ただし、会費にもいろいろな性格があります。とりわけ、資金ということで分けると3つの種類があります。一つ目は、団体の構成員(NPO法人の場合は「社員」)からの会費です。二つ目は、賛助会員やサポーターからの会費で、寄付金的な要素が強いもの。3つ目は、ニュースレターの購読会員や施設などの利用会員といった会員が払う会費で、なんらかのサービスやモノの対価となっている会費です。この三つ目の会費は、正確には会費収入というよりは、対価による収入と分類すべきものです。

寄付金は、見返りをもとめずに提供されたお金です。

本来事業からの対価というのは、たとえば福祉のNPOが福祉サービスを提供して利用者から利用料をもらう場合のように、その団体の目的とする事業から得た対価収入を指します。委託事業もたいていこの収入に含まれます。非本来事業からの対価というのは、チャリティバザーやチャリティコンサートなど、団体の本来目的の事業ではない事業から得た資金のことです。

助成金というのは、民間の財団や行政の外郭団体・基金などが、NPOの活動を支援するために出す資金です。一方、補助金というのは、行政が直接にNPOの活動を奨励するために出す資金のことです。

金利等は、銀行に預けたお金の利子や投資収益ですが、資金としては一般的ではありません。

(8)資金別の財源を知る

NPOの財源のいろいろ

8つの資金の拠出者は、ここで「財源」と呼んでいるものです。

助成金の財源は、助成財団や行政のつくった基金などです。最近、NPOに対する関心が強まり、どんどん助成財団や基金などが、NPO向けの助成プログラムを作ってきています。

補助金の財源は、中央政府や自治体です。補助金は実際たくさんあるのですが、長い歴史の中で、すでに支出先が固定化してしまっている補助金が多数を占めています。自治体によっては、補助金を公募制にしていますが、まだ少数派です。最近の行政の財政危機を受けて、補助金はなかなかアプローチができない状態となってきています。

一方、対価収入のうち、事業委託の財源の多くは行政です。近年、公募して審査して決めるという方式が増えてきています。また、近年、NPOの専門性などが評価され、企業から調査や商品モニターなどをNPOに委託する事例もでてきています。対価収入では、規制緩和の影響で、介護保険事業や、保育園の事業などの行政の補完事業が、新たにNPO法人ができる事業となってきています。このような介護保険事業をはじめとする、さまざまなサービスの利用者・購買者も対価収入の財源となります。

会費や寄付金などは、一般市民や団体が財源となります。また、寄付金に関しては、大手の企業などは社会貢献部などという部署を持っていて、NPOの事業に寄付をしたりしています。

借入金の財源としては、労働金庫とか地域の信用組合などが貸し付ける制度を最近始めています。

これらの財源に関する情報は、第2章に掲載してある情報源にあたるといいでしょう。

(9)目的と活動と事業の関係を知る

事業とは活動が成り立つ経済的な仕組み

NPO活動のスタートは、まずその「目的」にあります。

「地球環境を守りたい」「年をとっても暮らしやすい町にしたい」「海外の難民の窮状をなんとかしたい」。このような目的が、NPO活動の始まりとなります。

しかし、同じ目的をもっていても、そこで行う活動は千差万別となってきます。

たとえば「地球環境を守りたい」と考えているNPOの間でも、様々な活動があります。あるNPOは各国政府に対して地球温暖化防止条約に加盟させることに取り組んでいます。また別のNPOは、家庭において環境家計簿をつけることを普及する運動を展開しています。また、違うNPOは、学校などに対して環境教育を行う活動を行っています。

つまり、NPOは、特定の目的をもとに、そのNPOごとに、働きかける対象や働きかける内容・手段をさまざまに開発していくことになります。これがNPOの専門性を生み出していきます。

この働きかけの対象と働きかける内容、そして、その期待される結果というのが、NPOの「活動」となってきます。

さらに、「事業」といったときは、その活動がいかにして経済的に成り立っていくのかという点まで含めたものです。各国政府に政策提言をしていくために、その資金や人などの経営資源をどのようにして確保していくのか。活動とそれを支える資金集めの継続的な組み合わせをここでは「事業」と呼ぶこととします。しばしば、対価収入を得る活動だけを指して「事業」という言い方をする場合もありますが、ここではその意味ではありません。

そして、その事業の典型的な類型を「事業モデル」と呼ぶことにします。

(10)事業における企業との違いを理解する

対価を得られない活動が必要となるNPO

NPOの事業モデルが、企業のビジネスモデルと大きく違う点は、NPOの事業モデルでは、多くの場合、その活動の対象からまったく対価を得られないか、十分得られない活動があり、それを支える資金を生み出す仕組みが必要となることです。

もし、その行う事業が、相手から十分対価を得られるようなものであるか、将来的に十分対価を得られるようなものであるならば、NPOではなく企業としてスタートする方が良いでしょう。しかし、NPOには、社会的な目的があります。この社会的な目的は、その達成のために、ほとんどの場合、対価を得られない活動を必要とします。

たとえば、「年をとって体が不自由になっても安心してくらせるまちづくり」という目的を掲げたとします。そして、介護保険事業による介護サービスの提供を始めたとしましょう。しかし、介護サービスだけでは「年をとって体が不自由になっても安心してくらせるまちづくり」はできないでしょう。地域に必要とされる移送サービスや日常の相談のサービスをどう確保するのか。外出したときにバリアフリーな環境をどうつくるのか。年をとった場合に、地域コミュニティへの参加の方法をどう確保するのか。これら次々と新しく生まれてくる課題を解決していかなければ、決して「年をとって体が不自由になっても安心してくらせるまちづくり」は実現しません。

また、環境保全や人権擁護、難民支援といった活動は、活動対象から対価を得ることはほとんど不可能だといえるでしょう。

NPOの事業モデルでは、「活動対象から対価を得られないけれどもそれを事業としてどう成立させるか」が、最大のポイントとなるのです。

(11)NPOの収入による事業モデルを理解する

入門的な5つのモデル

対価を得られない事業をどういう資金で成り立たせていくか、これがNPOの事業モデルの基本となります。これにはいろいろなモデルがありますが、入門的なものをあげます。

まず、「ボランティア・モデル」とでもいうべきものがあります。つまり、そもそも経費をかけないというモデルです。活動にかかる人手をボランティアでまかなってしまい経費が発生しないようにするというものです。ボランティア個人が自分のお金で活動をまかなう場合もしばしばあるので、「持ち出し」モデルと呼ばれることもあります。

「会費・寄付金モデル」は、会費や寄付金を集めて事業の経費をまかなっていくモデルです。若干の集会での資料代などを徴収したりしますが、基本的には会費やカンパなどで事業を支えていこうとするものです。

この2つとは違い、事業の資金を行政の補助金や委託事業に求める事業モデルがあります。「行政補完モデル」とでもいうものです。このモデルでは、自分のNPOが行っている活動は、行政が本来すべき活動であるにもかかわらず、NPOが代行して行っているのであるから、資金は行政が出すべきであるという考え方に基づくことが多いようです。

また、「資金ミックスモデル」では、会費や寄付金、助成金、補助金、対価収入などのさまざまな資金をミックスさせて、一つの事業の経費を生み出していくものです。

最近多くの団体が採用している「事業ミックスモデル」は、組織のもとで、複数の事業を行い、収益の上がる事業と収益の上がらない事業を並立させ、収益の上がる事業からの収益で収益の上がらない事業へ資金を移転して経費をまかなっていく事業モデルです。

(12)事業モデルの変化のトレンド

事業ミックスモデルが主流に

5つの事業モデルも時代や政府との関係の変化によって移り変わってきています。

福祉や社会教育などの分野では、「ボランティアモデル」「会費・寄付金モデル」「行政補完モデル」が長い間主流でした。とりわけ、福祉国家の考え方が強かった時期は、「ボランティアモデル」からスタートして「会費・寄付金モデル」へと広がり、「行政補完モデル」を目指すという発展段階がしばしばとられてきました。

一方、国際協力や環境保全などの分野では、一時期、政府との対立などもあり、「ボランティアモデル」や「会費・寄付金モデル」または、非本来事業からの対価収入を柱とした「事業ミックスモデル」をとる団体が多かったのですが、90年代にはいると、政府との関係も大きく変化し、「行政補完モデル」や「資金ミックスモデル」「事業ミックスモデル」が広まってきています。

NPO法成立の前後からは、NPOの自立性を確立していこうという動きが主流的なトレンドとなってきています。政府もNPOに行政の補完を求める場合も少なくありませんが、新しいパートナーシップづくりへの模索も始まっており、その中では、NPOの自立性・対等性を尊重しようという意識が生まれてきています。

このため、あらゆる分野で、「資金ミックスモデル」や「事業ミックスモデル」が主流となってきているのが現在の状況です。この傾向は今後さらに強まると思われます。

「事業ミックスモデル」でも、かつては、収益の上がる事業として、チャリティバザーやコンサートといった本来目的以外の収益事業を営む事例が多かったのですが、近年は、本来目的事業を組み合わせて、事業をミックスしていく例が増えてきているのが特徴です。

(13)NPOにも製品やサービスの品目がある

NPOは一つの事業の下でさまざまな製品の提供をしていきます

NPOでも、「製品」や「サービスの品目」という概念をしっかり持つことが重要です。

たとえば、野鳥の保護を目的としているNPOが、野鳥の生態についての普及啓発を事業としている場合を考えてみましょう。この事業の下で、一般の人が毎週日曜日に自由に参加して野鳥を観察する会を催しているとすると、この催しがこのNPOの「製品」や「サービスの品目」となります(以下「製品」と呼びます)。

このNPOが、この催しとは別に、夏休みなどの小・中学生向けの野鳥観察会を新しく立ち上げて、学校に参加を呼びかけたりした場合は、NPOは新しい「製品」を開発したということができます。

また、海外の難民を支援しているNPOの場合、寄付金を集め、現地の難民に生活物資を手渡す活動なら、これが一つの製品となります。このNPOが、新たに、日本から医療チームを送るので、そのチームの活動費を寄付金で集める場合には、新しい製品を開発したということになるわけです。

ただし、NPOの場合、事業と製品との区別はきちんと明確に分けられるというものではありません。事業と製品が一体化している場合も多いですし、製品と思えるものを「事業」と呼んでいる場合もあります。

しかし、NPOは一つの事業の下に、さまざまな製品を提供していくことができるということと、製品は開発するものであるということを理解しておくことは、NPOの経営にとってとても重要なことです。

(14)収入・支出関係から見た時の事業の2類型

■消費型と生産型がある

NPOがどう事業の資金を作って、どう使っていくかという視点から、事業モデルを見るとき、「生産型」と「消費型」とでも呼ぶべき2つのタイプがあることを理解しておくことが重要です。(この呼称はもう少し検討が必要だと思いますが、ここではとりあえずこう呼びます)

生産型というのは、製品を販売したり利用してもらえばもらうほど、事業が拡大し、資金も集まるようなタイプの事業モデルです。先に述べた野鳥観察会の開催などは、この事業モデルです。

製品が利用されればされるほど、収入と支出が拡大していく形態です。

企業が商品を販売するのと同じなので、理解しやすいと思います。この事業モデルの場合、企業で使っている「損益計算」や「損益分岐点」といった考え方が利用できます。

一方、消費型というのは、ある事業をするのに、最初からまとまった資金をつくる必要があり、資金を作ることと事業の遂行が分離している事業モデルです。たとえば、ある河川の環境調査をすることを企画したとして、300万円の資金が必要だとします。すると、助成金や寄付金などで、まず300万円を作って、それから調査を行うというような事業の形態です。

この助成金が後払いであったとしても、また、寄付を集めながら事業を遂行していくにしても、基本的には「消費型」であるといえます。

この消費型においては、まず事業を遂行するには、いくらかかるのかという経費の見積もりが重要になってきます。そして、その経費をまかなえる資金をどうやって集めるかを考えるという手順になるわけです。

生産型と消費型の2類型は、事業開発などにおいて重要な概念となってきます。

(15)NPOの競争環境を理解する

NPOの事業は競争社会の中にある

資金作りという点で見た場合、NPOの世界は、基本的に競争の世界です。

介護保険事業などでは、企業や社会福祉法人との競争がすでに大きな関心事となっています。

それだけでなく、環境保全や人権擁護、平和の推進といった一見競争とは縁がないかのように見える活動であろうとも、いったん「事業」となれば、そこは競争の世界となってきます。

たとえば、環境保全の事業を行おうと考えて、助成金を助成財団に申請するとします。助成財団の多くは、公募で申請を受け付けていますから、そこでは、他のNPOとの助成金をめぐる競争が発生するわけです。その助成金を取れるかどうかで、活動ができるかどうかが決まってくるとなれば、いやが応でも競争に勝たなければなりません。勝つと考えると、助成財団に、自分のNPOの活動がより他のNPOの活動より価値があると認識してもらわなければならないわけですから、他のNPOの活動よりもより価値がある活動を提案しなければならないということになり、活動の間での競争にもなっていくわけです。

会員や寄付を集めることでも同様です。社会には問題が山のようにあり、それは環境保全や人権擁護といった一つの分野だけをとっても、さまざまな問題があります。市民や企業は、さまざまな問題に取り組むNPOから、頻繁に、寄付や会員になってくれるような依頼を受けています。けれども、市民や企業の寄付金や会費にあてられる資金には限界があります。ある寄付者は、「寄付をするならより価値ある寄付をしたい」と言っていました。同じ金額でも、より効果があり魅力的な活動へ寄付したいと考えている人たちがたくさんいます。この人たちに寄付や会員になってくれることを求めるのならば、NPOの活動は競争環境にあることを理解する必要があります。

(16)事業や製品は永続できないことが多い

事業や製品には発展段階がある

NPOの事業(製品)にも、発展段階があり、寿命があります。

それはNPOの競争環境や、社会環境の変化によってもたらされるものです。たとえば、あるNPOが福祉施設の見分け方に関するセミナーを始めたとします。スタートしたときは、なかなか利用者が増えなかったとしても、ある時期から上手く軌道に乗ってきたとします。そして、利用者が増えていきます。しかし、人気が出てくれば、企業も始めるかもしれません。政府も同じようなセミナーを行うことも十分考えられます。こうなってくると、競争の中で、セミナーの必要性や収益性を問い直さなければならなくなります。制度が変わって、福祉施設に関する情報公開などが進むこともあるでしょう。そうなれば、セミナー自体が不要になることも考えられます。

このようにNPOの事業は、以下のようなサイクルをたどると考えておく必要があります。

  1. 準備期:事業を企画・開発する段階です。収入がなく、企画・開発の経費がかかります。
  2. 立ち上げ期:事業や製品の利用をスタートさせ、社会に打ち出していく期間です。事業を社会に普及し、収入を確立していくための経費が収入を上回ります。
  3. 成長期:収支構造が決まった事業として成立し、発展していく段階です。収入も増えますが、社会への普及や販売促進などに経費がかかる時期です。
  4. 成熟期:事業が安定し、成長もそうありませんが、経費も低くなる時期です。
  5. 衰退期:競争が厳しくなったり、社会環境の変化によって、事業の必要性や収益性がなくなり、事業を終了させていく時期です。

消費型モデルの場合は、少し適合しない点もありますが、十分応用できると考えます。

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