市民参加・協働の理念
なぜ市民参加・協働が必要か
市民参加と市民協働
近年、「自治基本条例」の制定によって、市民参加・協働を原則とした自治体運営を謳う自治体が増加してきました。
本来、自治基本条例は、2000(平成12)年の地方分権一括法施行による、国と自治体の対等・水平な関係への移行を、自治体側から規定するという意味で、「団体自治」を表明するはずのものでしたが、実際には、自治体運営における「住民自治」の原則を表明し、住民からの信託によって自治体が存立していることを明らかにするものになっています。
その「市民自治」(=住民自治)を具体的に構成するのが、「市民参加」と「市民協働」であり、自治基本条例の制定が進むなかで、下図のような使い分けがされてきています。
参加と協働に共通する必要性
参加と協働が必要となってきた背景としては、市民と自治体のそれぞれに、下図のような変化が起こったためと整理できます。
参加によって、限られた自治体資源を、市民が本当に必要とする分野に配分することが期待でき、行政としても、政策の優先づけの根拠が得られます。協働によって、公共的な仕事を行政だけにお任せするのではなく、市民自ら担うことが期待でき、行政としても、市民自身の取り組みによって政策の実効性向上や行政コストの削減の効果を得られます。
参加が必要な理由
自治体としての意思「決定」は、民主的正統性に照らして、代表機関である議会や首長にしか行えませんが、意思を形成していく「協議」の段階では、もっと市民が意見を表明する場が求められます。
東京ランポがこれまで行ってきた調査の結果を総合すると、「協議」の段階を充実させることで、次のような効果が得られます。
・市民ニーズを把握でき、市民が本当に必要としている政策の発見につながります。
・政策をめぐる議論が活性化して、新たな論点の発見や既知の論点の確認ができます。
・NPO活動等で培った専門性を活用したり、参加した市民の関心を喚起したりできます。
・意思形成過程の透明性を高め、民主的な自治体運営に寄与します。
参加手法の組み合わせの必要性
一口に市民と言っても、おおざっぱには3つのタイプに分かれます。従来の市民参加は、町内会長や各種団体代表を対象とした、地元調整や審議会等の委員委嘱でしたが、最近では、自ら希望する市民を公募して、参加してもらう手法が増えてきています。
広く市民の関心を知り、合意を形成していくには、行政と関係の深い既成団体の人、新たな分野で活動しているNPOの人、関心はあるが団体には所属していない人、関心はあっても継続的に会議に参加する時間がない人、意見表明する場があれば言いたいことがある人など、様々な市民のタイプに応じた参加手法が必要です。
参加手法には、次のような種類があり、これらを組み合わせることが重要です。基本的には、策定組織が、より広い市民意見を把握しながら、議論するという組み合わせになります。
・継続的に議論し、結論を深める策定組織(審議会等、公募市民会議、継続型ワークショップ)
・広く市民の意見を集め、策定組織に反映する手法(アンケート、パブリック・コメント)
・策定組織と意見交換を行う手法(策定組織が出向いての意見交換会、単発型ワークショップ)
協働が必要な理由
行政のサービス水準は、概念的に言えば、平均的な市民のニーズに合わせたものとなります。厳しい自治体財政、また資源・能力の面での限界もあり、行政が応えられるサービスは、今後減少するでしょう。また、防犯・防災、地域福祉・介護・子育て、廃棄物のリサイクル、地区のルールづくりなど、市民の自主的な取り組みなくしては成り立たない領域もあります。
行政によるサービスは、議会による予算審議の制約を受ける点で、原理的に言えば、過半数の市民の賛成がなければ執行できません。一方で、NPO活動などは、市民自らが課題と感じたことを解決するために、柔軟にサービスを提供できます。規模こそ異なりますが、他者と課題を共有するという点で、NPO活動なども立派な「公共性」を持っています。
自治体は、NPOなどと協働することで、より広い範囲の「公共」領域をカバーできます。
(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
|