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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
第7回豊島区自治基本条例区民会議開催
2004/8/27


●2004年8月25日(水)午後6時〜9時15分、豊島区民センター4階第2会議室にて、第7回豊島区自治基本条例区民会議が行われた。筆者は傍聴した。

●区民会議は、5回の準備会を経て、前回正式発足したため、今回からは、事務局ではなく、運営委員が交替で会議を進行することになった。
 会議の冒頭、自治基本条例担当係長より、自治基本条例策定のための職員プロジェクトチームも発足したことが報告された。今後、区民会議と意見交換することもあろうとのことであった。部局横断的な14名からなる職員チームのメンバーも、そのうち半数以上が傍聴に来ていた。

●この日は、20名程度のメンバーと2名の助言者(小原隆治・成蹊大学法学部教授、江上 渉・立教大学社会学部教授)が出席した。また、ホームページで傍聴の呼びかけが全くないこともあってか、筆者以外には一般の傍聴者はいないようであった。

●この日のテーマは、豊島区が進める「地域区民ひろば構想」について学習することであった。まず、構想を担当する課長より説明があり、質疑応答が行われた。その後、休憩を挟んで、協働担当の職員から豊島区の協働推進施策に関する説明と、自治基本条例担当係長から他自治体のコミュニティ行政の事例や今年の地方自治法改正で導入された地域自治区について説明があった。最後に全体討議が行われた。

●「地域区民ひろば構想」に関する説明は、構想の具体的な説明ではなく、なぜ構想が必要なのかの説明であった。「自治」の辞書的な意味から始まり、身近なところでできないものだけを上位にある単位で処理していくという「補完性の原理」が説明された。そして、右肩上がりの成長時代には、地域でできることも区が引き受けてこられたが、今後の低成長あるいはマイナス成長の時代には、地域でできることは地域で引き受けなくてはならなくなる、とのことであった。
 そこで、豊島区では、「地域区民ひろば構想」を打ち出し、ことぶきの家や児童館といった既存の公共施設を、「地域区民ひろば」という小学校区単位の地域複合施設に転用し、地域で管理運営していくとの説明であった。その際、区が考える課題としては、(1)複合施設化することで、もともとの利用者が使えるスペースが減ること、(2)複数の小学校区に分断される町会が出るなど、小学校区と町会の範囲が重なっていないこと、(3)「地域区民ひろば」を運営する運営協議会が、全ての小学校区で立ち上がるか難しいこと、があるとのことであった。

●筆者は、豊島区とは何の関係もない部外者であるが、説明が抽象的で漠然としていることに、大変不安を覚えた。確かに、ものごとを進めるには理念も大切であるが、悪化しているという区の財政数字や「地域区民ひろば構想」の導入で見込める財政改善効果の具体的数字、逆に「地域区民ひろば」の運営にかかるコストや区から運営協議会への資金補助の額、運営協議会の権限とその正統性を担保する仕組みなど、もっと具体的な話が必要なように思えた。
 案の定、そのあたりは、メンバーから積極的な質問や意見が出た。運営協議会にどのような権限が与えられるのかという質問には、地方自治法で導入された地域自治区との制度的な関連も含めて、明確な回答はなかった。地域がやるべき仕事を具体的に教えてほしいとの質問にも、道路清掃や防犯といったことがやっと出てきた感じで、きちんと整理できていない印象であった。運営協議会が「地域区民ひろば」を運営していくには、マネジメント能力が必要であり、まずはモデル的に実施して実績をつくってから広げるべきでは、との建設的な提案にも、どのみち進捗に差が出るのだから一斉に始めたいというニュアンスの回答であった。

●その後、自治基本条例担当係長から行われた、他自治体のコミュニティ行政に関する説明でも、同様の展開が見られた。
 係長が取材に訪れた目黒区では、1974年より取り組まれてきた小学校区単位の「住区住民会議」が、いまでは単なる施設の維持管理役になっており、地域活動につながっておらず、失敗との評価がなされているとのことであった。
 その目黒区の担当者が成功例に挙げたのが、武蔵野市と三鷹市。そこで、係長は武蔵野市にも取材に訪れ、成功の要因を聞き出し、この日メンバーに伝えたのであった。
 係長の説明によると、武蔵野市は、戦後に町内会が復活せず、コミュニティセンターを拠点とするコミュニティ活動は、市民の自主的な個人参加で行われてきた。センターを管理運営するコミュニティ協議会には、エリア外の人を含めて誰でも運営委員として参加することができる。また、コミセンニュースのポスティングなどだけやる協力員もいる。
 市から協議会へは、センターの窓口業務の委託費として500〜600万円、活動補助金として200〜300万円が出ているが、基本的には市民のボランティアで運営されている。そのため、センターは規模も機能も対象地区も一律ではなく、地域性の反映された運営がなされているという。
 もっとも、課題もあり、やはり運営委員の高齢化が進んでいる。そのため、地元の中学校との交流や市内の大学との連携を模索中とのことであった。
 その他、取材結果ではないが、大和市が打ち上げた「市民自治区」についても、ホームページ等での調査結果が報告された。

●武蔵野市を成功例として報告した係長に対し、助言者の江上氏からは、「三鷹も武蔵野も失敗」であるとの反論があった。その要因としては、第一に、権限が明確でないこと。協議会に入っていない人が従わなくても文句が言えない。豊島区の「地域区民ひろば」の場合も、どのような権限を持つかが重要とのことであった。また、第二には、住民側の問題として、どんな地域にしたいのかという構想や夢を持たずに組織だけできてしまったこと。「地域区民ひろば」の場合も、区民の側からのボトムアップの発想がなければ、必ず失敗するとまで言い切っていた。
 メンバーからも、豊島区には都会的な生活を好み、他からしばられるのはいやだと思っている人が多いことを念頭に入れる必要がある、といった指摘もあった。また、町会長をやっているメンバーたちからは、地域を解体する方向ではなく、既存の町会を適正規模に統廃合しながら、組織をつくっていく方がよいとの意見も出された。逆に、「地域区民ひろば構想」は成功すると「信じている」というメンバーもおり、区の財政が厳しくなるなか、取り組まない地域はそれなりのことを負うべきだという意見であった。

●筆者は、コミュニティ政策に関しては、最近研究を始めたばかりなので、あまり確かなことは言えないが、70年代以降の自治体内分権の試みが大いに成功したという評価は聞かないように思う。
 今回、係長が成功例として紹介した武蔵野市にしても、市の担当者の話を聞いただけで判断するのは控えるべきであろう。自治体職員による政策形成が、このような上辺の聞きとり調査だけで進むとしたら、多くの失敗政策を生み出すことになりかねない。
 もっとも、豊島区の場合は、この区民会議のメンバーが、区民としての生活実感に根差した疑義を示しているため、「地域区民ひろば構想」が理念だけで暴走するのに一定の歯止めをかける効果はあると言える。

●いずれにせよ、コミュニティ政策を考えるにあたって大切なのは、何を持って「成功」「失敗」を判断するか、ということではないだろうか。例えば、自治体内分権によってできた「住民協議会」のような組織に、実質的には地域住民の一部しか参加できていないことを指して「失敗」と判断する見方も成り立つ。確かに、運営委員が固定化・高齢化して、新しい人材を得られなくなることは問題であろう。
 しかし、転じて見たときに、自治体である市区町村に、現在、市民の大半が参加していると言えるのか。結局、いまの自治体にしても、そこで何の仕事がされているかに大した関心を持たない市民を構成員として、それでも「テキトーに」成り立っているのではないか。だとしたら、関心のある人だけで、自治体内分権のなった地域を運営していくとしても、それほど問題ないのでは、とも考えられる。

●筆者として、現時点では、確たる「成功」「失敗」の判断基準はない。しかし、コミュニティセンターのような施設運営を例にとれば、自治体からの補助金や委託料の金額に見合う範囲でということになるが、運営協議会のような地域を代表する機関が責任をもって、住民が満足できるレベルのサービスを継続的に提供することができていることが、最低基準であるように思う。補助金の一本化による財源委譲についても、サービスを受ける住民の満足が得られるような使い方がなされるべきだろう。
 そのうえで、次の基準としては、自治体よりも身近な共同体であることの意義として、住民が単なるサービスの受け手ではなく、サービスの担い手として参加してくるということである。都市部の場合、既存の町会組織などから「こぼれ落ちて」いる住民が多い以上、個人やNPOといった様々な形態での参加の形を提供し、運営協議会がまちづくりの連絡体となるようにすべきであろう。
 とは言え、筆者の意見も、大して斬新なものとはいえない。あちこちの自治体で始まった、新たな自治体内分権の取り組みを見ながら、また、これまでの先行事例をレビューしながら、筆者もこれから模索である。

●次回は、9月3日(金)午後6時30分〜8時30分、豊島区民ホール5階音楽室にて、夏休みの課題発表と条例の骨子をテーマに、開催される。

 豊島区ホームページ 自治基本条例のホームページ

「第6回豊島区自治基本条例区民会議開催」「第8回豊島区自治基本条例区民会議開催」「第10回豊島区自治基本条例区民会議開催」「第13回豊島区自治基本条例区民会議開催」「第17回豊島区自治基本条例区民会議開催」「豊島区の自治基本条例づくり、区民会議案まとまる」もご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

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