都市計画関連のまちづくり
訴訟
| 横浜地裁・地下室マンション訴訟、横須賀市の建築確認取り消し |
2005/4/7
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横須賀市湘南鷹取のいわゆる地下室マンション計画(地上7階地下3階)への建築確認に対する地元住民からの処分取消訴訟について、横浜地裁は2月23日、建築主事の確認処分の取り消しの判決を言い渡した。ちなみに、横須賀市は3月8日に「あえて控訴しないこと」を決め、発表している。以下は、横須賀市の記者発表資料および市の担当者への取材によって、訴訟の争点および、判決を受け入れた横須賀市の対応についてまとめたものである。
この訴訟は、周辺住民6名が平成13年9月に建築確認の取り消しを求めた審査請求、平成14年7月に変更確認処分の取り消しを求めた審査請求を行い、平成15年3月の建築審査会はいずれの請求も棄却する裁決を下したことから、湘南鷹取2丁目自治会を含めた周辺住民18名(審査請求の6名を含む)の原告が、横須賀市建築主事が行った建築確認処分、計画変更確認処分について、
(1) 都市計画法第29条第1項に基づく開発許可が必要なのに、開発許可を得ていない。
(2)建築基準法第19条第4項及び建築基準条例第5条第1項の規定に反して、建築物の基礎が崖上から1m離れていない。
(3) 建築計画の地盤の許容応力度の算定方法が、建築基準法第20条、同法施行令第93条の規定に違反している。
ことを理由に、平成15年6月横浜地裁に処分取り消しを求めて提訴したものである。
今回の判決は、上記3つの理由のうち、(1)についての判決で、(2)と(3)については審議もされず、判断も示されていない。(1)に関して、都市計画法29条第1項は、「開発行為をしようとする者は、都道府県知事、または指定都市等の長の許可を受けなければならない」と定めている。主要な争点になったのは、次の3点である。
1.原告適格があるのか
2.開発許可を受けていないことを理由として、確認処分を取り消すことができるのか
3.この建築計画が開発行為にあたるのか。
各争点ごとの原告(住民)と被告(市)の主張、裁判所の判断は以下のようになる。
■原告適格があるのか
<原告の主張>
・建築予定地の崖地に近接する位置に土地を所有し、崖地の崩壊等の危険にさらされ生命、身体、所有財産の危機にさらされる蓋然性がある。
・開発許可を受けていないから、交通の安全の配慮、適切な排水施設の整備がなされず、周辺住民が享受すべき利益が阻害されるから、周辺住民で構成する自治会も原告適格をもつ。
<被告の主張>
・社会生活を営むにあたり、一定の範囲の不利益は受忍限度の範囲内として許容される。
・生命、身体、財産の不利益は具体性がない。
<裁判所の判断>
・建築予定地が都市計画法33条1項7号にいう崖崩れの恐れがある場合に、開発許可を経由せずに建築されたことによって、直接的に被害を受けることが予想される範囲内の地域に居住する者は法律上の利益を有し、原告適格を有する。
・本件は崖崩れの恐れがある土地と認められる。
・自治会は原告適格として認められない。
■開発許可を受けていないことを理由とする確認処分取り消しの可否
<原告の主張>
・建築主事は、建築計画が開発行為を伴うかどうかについて、独自に審査する権限をもっている。
<被告の主張>
・建築主事は開発行為に該当するかしないかを審査をする権限をもたない。
<裁判所の判断>
・建築主事は、開発行為を伴うかどうかについて審査し判断する権限をもつ知事等(本件では横須賀市長)の審査が実際に行なわれたか、行なわれなかったのかを形式的、外形的に判断する権限をもつにとどまり、知事等が行なった審査が妥当かどうかを再審査する権限をもつと解釈できない。
・開発行為に該当するかどうかの知事等の判断に誤りがある場合、都市計画法第29条第1項の規定に反して、開発許可が必要なのに、開発許可を得ていないこととなり、開発許可を前提とする建築確認処分も瑕疵あるものとなる。確認処分に瑕疵があることを理由として、法律上の利益を有するものは、その処分の取り消しを求めることができる。
・知事等による開発行為に該当しない旨の判断に基づく証明書の交付行為は、それ自体を行政庁の処分に当たる行為として取消訴訟の対象とすることは困難である。そうすると、開発行為該当性に関する判断に不服のある周辺住民等が開発許可制度によって保護されるべき利益の救済を求めて訴えを提起する途は閉ざされることとなるが、そのような解釈は、行政事件訴訟法の趣旨・目的に反する。
・建築主事は、開発行為の該当性を知事等が判断したのか、しなかったのか(判断の存否)、どのような判断をしたのか(判断の内容)を、形式的、外形的に審査する権限をもつにとどまることから、このような方法による建築主事の建築確認処分に係る権限の行使をもって、直ちに、建築基準法上、違法を構成するものということはできないが、本来必要な開発許可が欠落しているとの事実を主張して、その取消しを求めることはできる。
■開発行為に該当するか
<原告の主張>
・開発行為(土地の区画形質の変更=都市計画法第第4条)に該当しないとして本件に適用された「単なる形式的な区画統合の基準」(*)は、二次的な開発において限定的に緩和するもので、本件に適用するのは違法。
・「形の変更」にあたる2m以上の切土が生じている。
*「単なる形式的な区画の分割又は統合によって建築物を建築する行為の取扱いに係る運用基準」(平成12年11月1日通達)
既に開発許可を受けた区域や土地区画整理事業等の計画的な開発が行われた区域における二次的な開発行為については、当該開発区域の周辺において一定の水準の公共施設が整備されている場合も多いことから、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為の定義においては、建築物の建築に際し、切土、盛土等の造成工事を伴わず、かつ、従来の敷地の境界の変更について、既存の建築物の除却や、へい、かき、さく等の除却、設置が行われるにとどまるもので公共施設の整備がないと認められるものについては、建築行為と不可分一体のものであり、開発行為に該当しないものとして取り扱うものとする。
<被告の主張>
・単なる形式的な区画統合基準は、通達の趣旨から再開発に限定していなく、また、本件は公共施設の整備も不要で、区画変更に該当しない。
・2m以上の切土は存在しない。
<裁判所の判断>
・区画の変更は、従前と異なった規模ないし密度に土地利用が行なわれることから開発許可制度の規制のしたに位置づけられる。
・本件建築計画は、未整地の傾斜地と平坦で舗装された駐車場という全く異なる2つの区画を統合し、一体として1棟の建築物の敷地として利用するもので区画変更に該当する。
・単なる形式的な区画統合の基準は、例えば整備された市街地において複数の建築物を形式的に統合する再開発型開発行為に適用すべきで、本件のような区画の変更行為を開発行為から除外する趣旨であったとは、到底解されない。
・本件建築物北側の避難通路の掘削に係る切土を、形の変更にあたるかどうかの検討の対象から除外することはできない。当該避難通路において2mを超える切土が存在することとなり、開発行為に該当する。
●横須賀市の控訴とりやめとその後
横須賀市はこの判決に対し、「事実認定」と「法解釈」に誤りがあり受け入れがたい部分があるものの、以下のような土地利用・まちづくりに対する社会情勢の変化や、現在の横須賀市の積極的取り組みにかんがみ、あえて控訴せず、収束させて、将来の良好なまちづくりに向けた施策へまい進することとした。
1.横須賀市は、市民の生活環境の維持保全を図るため、
・事業者と住民の調整ルールを定めた「特定建築等行為条例」施行(平成15年2月)
・建築物の絶対高さ制限を設けた「高度地区」告示(平成16年1月)
・斜面地建築物の階数制限を定めた「斜面地建築物の構造の制限に関する条例」施行(平成16年7月)
といった、土地利用・まちづくり政策を推進している。
2.現在開会中の市議会第1回定例会(3月)に、市の地域的特性を踏まえ、斜面緑地の確保等の基準を定めた「適正な土地利用の調整に関する条例」を提案し、制定されれば7月より施行の予定(3月28日議決・3月31日公布)。
3.国の動きを見ても、昨年の景観法、都市緑地法の制定、今国会提案予定の国土総合開発法等の改正など、環境の保全は良好な景観の形成へと機軸を変更しつつある。
なお、この控訴をしないこととした横須賀市の判断には、行政事件訴訟法の改正(4月1日施行)により、国民の権利利益のより実効的な救済手続きが整備されたこと、裁判所において法改正の精神が前倒しで反映されたことなどが影響しているものと思われる。
横須賀市が控訴を断念したことで、確認処分の取り消しが確定したが、事業者が行なった確認申請は有効と考えられることから(行政事件訴訟法33条3項)、申請に対して市として対応しなくてはならない。対応策としては次の3つが想定できる。@建築確認の要件に適合しないとして却下する。A事業者が改めて市長に開発許可申請をして開発許可を得るまで、申請を留保しておく。B事業者に申請の取下げを指導する。
いずれの対応策を選択した場合でも、再度争訟に発展する可能性をはらんでいるが、横須賀市では事業者と円満解決に向けて話し合いを行なっているという。
(東京ランポ事務局長・辻 利夫)
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